大切な君に

｢さ…沙耶…。｣






和希がかすれた声であたしの名前を呼ぶ。










まるで、今まで泣き叫んでいたことを示すかのように──










和希の体はボロボロになっていた。








ジャージは切り刻まれ、腕や脚にナイフで切られた後があり、殴られたのか、蹴られたのか分からないけど、顔には大きなアザがあった。











和希の周りは……血だらけになっていた。












すると、和希のお父さんが……









｢あ、和希の友だちかい？
ごめんねぇ、今ちょっと和希の空手の練習をしていたんだ。
実際に襲われたら大変だからねぇ。｣







と、さっきまでとは打って変わったニッコリ顔で言う。









和希の顔を見ると……











胸が締め付けられるような、そんな顔だった。