ロールキャベツ

僕のデスクに並べられた沢山の土産。

こうやって買ってきてくれるのは嬉しいが…いくらなんでも多すぎないか。


菱川は毎年、旅行にいっては様々なお土産を僕に買ってきてくれる。

今年は鎌倉の温泉に行ってきたらしい。

さつま揚げのセット、カスタードケーキ、手作りワラビ餅、草餅の詰め合わせ、小さい大仏の置物。

なんだか今年の土産は…甘いものが多いような気がする。


「尾形さんと、召し上がってください。きっと甘いものお好きですよ」

不敵な笑みを見せる菱川。

苦笑いをしたのは、部下に冷やかされるのが恥ずかしくて仕方なかったからだ。


「菱川、これは?」

「それは、決まってるじゃないですか。尾形さんと吉良さんの、夫婦大仏です」


お決まりの八重歯つきの笑顔で自慢気に菱川が言う。

大仏の小さい置物は、ひとつは普通なのだが、もうひとつには赤いリボンがついている。

それがまたシュールなデザインで、笑いがこぼれてくる。

夫婦大仏なんて言って買ってきてくれるのは、恥ずかしいような、嬉しいような、説明がつかない気持ちだ。


まだ、今は…彼女とは夫婦ではない。
だから、ただの置物ということにして渡そう。

もし夫婦用だと言っても、彼女ならきっと、控えめに笑って、飾ったりしてくれるんだろうけど…



「ちょっと、買いすぎましたかね。

吉良さんって、娘さんいらっしゃいましたよね。甘いものとかお好きでしょ?お菓子とか、召し上がっていただいて…」

それから菱川は、話を続けていたけど…

ごめんな、返す言葉が何もないよ。


あの子は、甘いもの好きなのか?

その前に、何が好きなんだろう…


こんな風に思う僕は、親失格だ。

昔から何も、分かってやれなかった。
昔から何も、知ろうとしてやれなかった。


だから今、お菓子を一緒に食べることさえも、許されないんだな…



「吉良さん、吉良さん!」

「…ん?」

また、ボーッとしてしまっていた。

「尾形さん、いらっしゃってますよ」

菱川が差した事務所のドアのすぐそばに立っている彼女。

しっかりしろ…
そう唱えながら、彼女に駆け寄る。

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