ロールキャベツ
「それで?森崎の反応は?」
「全然効果ナシ。すぐに髪の毛セットしてたよ」
らしいじゃん、って笑うあさみ。
どうやら、お父さんが森崎さんを気に入ってないことについて悩んでいる様子はなさそうだ。
「今はどうだっていいかも」
「どうして?」
「だって、森崎すごく今大事なポジションにいるんでしょ?」
よくわからないけど、と付け足して言った。
チーフ…って言ったら、部長みたいなものかな。でも、ホテルの顔になるエントランスフロアのチーフなんだから、もっとすごいって事だよね。
何て説明しようか考えていると、私の顔を見てあさみはフッと吹き出した。
「朋香がそんなしかめっ面になるぐらい、
ややこしくて大変な職務ってことでしょ?
なら、邪魔したくないし。
私も今、仕事楽しいからさ?
今は家族との関係なんて…気にしてられない」
そうだよね…
あさみはアパレルブランドのプレスだもんね。
今は仕事を楽しんでいたいんだよね。
その気持ちは、分かる。
「でも、いずれは結婚したいと思うでしょ?」
「まぁね…でも、たまにね?
森崎が何考えているのか分からなくなる」
「え…」
「やだな、そんなあからさまにガッカリしたような顔」
あさみは笑ってごまかすけど…
分からなくなるって、どういう意味?
「深い意味はないよ。
ただ、あんな性格じゃない?
ときどき、私との将来とか考えてるのかなーって…不安になるんだよね」
そんなの…考えてるに決まってるじゃない。
あさみたち、結構長いでしょう。
そんな言葉は、出なかった。
ネガティブなあさみは、あまり見ないから。
いつも私の相談ばかりのって、これまでいつも姉さん的な存在でいてくれたあさみ。
あさみはあさみで、ずっと悩んでいたのかも。
「森崎さんは…」
「確かに、軽いし無駄に明るいし、ウザい。
見た目も昔の二枚目みたいだし、
真剣な顔とか仕事以外で全然しない。
要するに、チャラい。
けど…あさみのお父さんの話をしたとき、
一瞬だけだったけど、
本当に悲しそうな顔をした。
仕事をしてるときみたいに、真剣な顔だった」