確信犯
秘書課で渡されたコピーを持って。
来客へのご挨拶。
僅かな時間だけの滞在を終える。
会議室から出て、廊下を歩くと。
こちらへ向かってくる人の姿。
堂々としていて。
姿かたちは悪くない。
白澤――会長。
匠の、お父様だ。
すれ違い様の挨拶は気が退けるし。
廊下の脇へ避けて、一礼。
「馬の骨は目障りだ」
その言葉が。
私に向けられたモノで。
白澤会長の口から出たモノだと。
すぐには気付けなかった。
――馬の…ホネ…
匠の旧体制感覚は、この人の遺伝?
咄嗟の、切り返しが出てこない。