確信犯
私の様子を眺めていた匠と。
目が合う。
向こう側の座卓で。
“文句ないだろ?”風に、忍び笑い。
「日曜、こっちでゴルフの約束があってさ。前乗り、兼ねてるから」
――前乗りは、前日入りでしょ?
明日は土曜日です
「道理で…豪勢すぎる送別会だと思いました」
接待ついでだし顔を出せ、なんて。
言わないですよね?
少しだけ、心配になる。
「退職理由は、当て付けか?」
ネクタイを緩めた匠が。
斜めに私を見詰めて言った言葉に。
「自惚れたければそれでいいです」
当たらずとも遠からず、だし。
気負いなく、そう返答した。