確信犯
伸ばされた匠の左手は。
私の襟元をそっと、正して。
「今度、ココで社の懇親会やるんだ。オーナーが知人。オヤジの予定が妙で、後を付けたら案の定だ」
母の面差し残る、匠の端正なカオ。
表情に乏しい眼差しで。
「ゴメンな――『八重』」
そこには。
あらゆるモノが詰まってて。
凍っていた何かが溶け始める。
――そう、じゃない
謝られたいワケじゃない
「さっきの光景で記憶、戻った」
やっぱり
でも、それも違う
責めても、くれない
こんなに堕ちた私を
身勝手に巻き込んだ私を
このヒトは罵って当然なのに――