確信犯
恐怖と。
憐憫のような感覚に囚われて。
動けない。
「行こう」
短く言って、振り向いた匠は。
無表情で。
「オヤジは放っときゃ、誰かくる。死んでもいねーし」
床に倒れ伏した白澤有雅に、冷たい目で一瞥をくれて。
匠は、私の肘を掴んだ。
そして、そこら辺の荷物を集めて、私のトートバッグに押し込むと。
自然にベビーカーを押す。
それは。
とても当たり前のようにされて。
抗うコトを思い付かせない。
白澤有雅は。
まだ、生きている。
――だったらまだ、追い込める
そう思った。