確信犯
私は、悔しくて。
声が戻ってきても、悔しくて。
日本に連れて帰ってこられたあと。
和菓子屋の近所に、祖母が現れて。
初めて。
祖母だけが母の味方をしてくれた。
私の中で。
正義は、母と祖母になった。
――なんにも知らないクセに
母の孤独を、覚悟を、愛情を
もがいても溺れていく苦しさを
あの光景の恐怖を
母の日記と、祖母の無念さが。
私の生きる道標だった。
7歳で祖母も失って。
大人になれるまで、なってからも。
増していく悔しさを抱えて、白澤有雅へと着実に近付いてきた。
委託会社の中で異動を繰り返して、白澤印刷へ配属されるのを待った。
私達の、正義だけを見詰めて。