確信犯
匠のコトは。
よく知らなかった。
5歳までしか一緒にいなかったし。
記憶にある思い出は限られていて。
匠は、とてもキレイで。
優しい男の子だった。
大人に成長した匠を見た時は。
困惑した。
確かに、母と似てはいるのに。
匠はもう、大人の男性の骨格で。
会ったコトのないイキモノだった。
兄、だとは思えないのに。
懐かしさ。憧憬。親近感。
けれど記憶の中の匠は、白澤有雅をとても慕っていて。
油断は一切、できなかった。
そのうち。
私が匠を、“ただの異性”として見ているような気がして。
怖くなった。