確信犯
「名前で呼べよ」
委託社員との壁、をなくすタメか。
匠はそう、口にする。
そんな必要、ある?
分け隔てないキモチの表れは、十分嬉しいと思えるはずなのに。
「ハクタク」
そんな風に、呼んでみた。
「は?」
「“白澤さん”が嫌なら、その漢字の別の読み方で」
「中国の聖獣だろ、ソレ」
――無駄に、知ってるんだ
乾いた笑いが溢れて。
隠す為に、目を瞑る。
「そんな呼び方したヤツ、いなかった。けどお前、バカ?」
薄ら笑いをされた。
――初めて、呼ばれたんですね