確信犯
「一ノ瀬さん」
部署内に響く、声。
「夜、同行してもらいたい」
無表情を努めて、見返す。
「接待同行なら、秘書課の方が適任だと思います、白澤室長」
声をかけてきた、匠に。
やんわりと、断りを口にする。
幾度か重ねた食事会で。
匠と仲良くなった奥平チーフが。
窺うように、言葉を挟む。
「業務後なら、こちらの仕事には差し支えないから大丈夫ですよ」
奥平チーフの、その言葉に。
匠がニヤリと笑う。
「終わったらエントランスで」
そう言い残して、匠は去った。