確信犯
虚ろになった母の口癖は。
『良いのよ、それで』――
儚さを増した母が。
壊れそうに、囁くから。
ただ、自分の小さい手を伸ばして。
母を精一杯、抱き締めた。
思えばこの頃。
白澤有雅が本妻との間に。
匠を引き取ることを、母に突き付けたのに違いない。
日本から離れて、産んだ子供。
白澤有雅は本家の娘に奪われて。
匠まで、奪われる。
もしかすると――私も奪われる。
白澤有雅はもう、来なくなる。
母の心は。
ギリギリ、だったんだと思う。
白澤有雅は確かに。
見映えが良かったけれど。
私からすれば。
母の哀しみの、元凶でしかない。