確信犯
眩むような、香りに包まれたのは。
雷が大きく鳴った時で。
ビクン、と跳ねる私の肩を。
いつの間にか私の傍まで来ていた会長の骨ばった手が、抑えていた。
「美しい、サラサラした黒髪だ」
私の肩までの髪を会長の指が梳く。
お礼を言って、頭を上げた時。
落雷とともに部屋の電気が消えた。
思わず竦んだ私の躰を。
会長が静かに引き寄せて。
「私の言うことを聞いたら…委託会社にも君にも、悪いようにしない」
会長の声は。
耳元で聞くと艶かしくて。
私の背中から、力が一気に抜けた。
「奥平……美也子(ミヤコ)」
おとがいを指でなぞられて、ゾクリと躰が揺れる。