確信犯
「…ここまで、」
突然。
冷たいけれど、艶やかな声がして。
会長の口唇から解放された。
「続きが欲しければ、匠が総務課と接触する様子を報告しなさい」
手の甲で口元を拭いながら。
会長は立ち上がった。
冴えざえとした瞳に見下ろされて。
ハッ、と我に返る。
「いいね? もう下がっていい」
背中を向けて、会長が窓際の席へ向かった時。
パキン、と音がして電気がついた。
私は慌ててスカートを整える。
もう、私を見ない会長に一礼して。
会長室から逃げ去った。
まだ熱く、果て切れてないまま最大限に焦らされた躰の奥。
反比例して冷えていく思考。
私は既に、会長に魅せられていた。