確信犯
「なぁんも、聞かねーのな」
接待がキャンセルなら、同行は不要になって当然だし。
秘書課の人間の都合が悪かったなら、仕方ない。
「奥平チーフの、ご意向ですから」
淡々と。
それだけ、伝える。
「じゃねーよ、食事」
私が断るのを。
先手打って遮った人が、何を言う。
「実家の店のこと、感謝を表してなかったので。今日はご馳走します」
食事に来てから。
初めて、匠と視線を合わせる。
「奥平チーフに実家。なるほどな」
はっ、と短い息を吐いてから。
匠が、笑いだした。