確信犯
『忘れてよ』、って。
言った癖に。
「――お前が…誰かのモンじゃないって、それが分かった瞬間、」
――いい
聞きたく、ない
『忘れてよ』、って。
言ったじゃない。
はからずも。
唇を重ねて。
言葉を塞ぐ。
聞きたくない。
『大丈夫?』とか。
『誰かのモノじゃない』の続き。
驚くほど。
理解も、理性も超えて。
相手に馴染む肌が。
キモチ良さが。
痛々しさを増す。
「美森――」
やめて。
そんな声で。
――“私”の名前を
呼ばないで