確信犯
政宗からは色香が溢れていて。
八重は目を逸らした。
「お父さん。僕から少し、説明してもよろしいですか?」
白澤有雅は、政宗に向かって頷く。
それも、八重は見たことがないような、慈愛に満ちた表情で。
「こちらにいる僕の父から、白澤印刷は僕が引き継ぎます」
政宗は、凛とした姿勢で告げる。
「父は白澤印刷の持ち株を譲渡しました。M&A(企業買収)が完了するまでは、他社の役員も兼ねます」
それは恐らく、白澤有雅が。
白澤印刷の会長でありながら、
白澤印刷を他社に買収させて。
白澤印刷の買収先の役員を兼任する、ということだろう。
買収先と繋がって、混乱が落ち着いた頃、白澤印刷を取り戻すのか。
政宗を使って。