確信犯
たまりかねたように。
奥平チーフは。
肩までの黒髪を揺する。
「…キスも……してくれない…」
はらり、と。
奥平チーフの横顔に張り付いていた、一筋の黒髪の束が落ちて。
彼女の瞳が、現れた。
なんとも、たとえようがない。
敗北とか、絶望とか、憎しみとか。
そういうモノではなくて。
ただ。
途方に暮れたような。
迷子みたいに頼りない瞳で。
奥平チーフは白澤有雅を見た。
「君の躰は魅力的だ。匠1人くらい、簡単だろう。せっかく任せたんだから、やりなさい」
丸め込むような優しげな声で。
白澤有雅は。
それこそ扇情的に、奥平チーフの首筋を掌でなぞった。