確信犯
爪の先まで。
にじむように温められるのは。
匠しか、いない。
「――マスメディア、片付けなきゃいけないね…」
「それよりオマエが…病院が先だ」
頭の中に。
自分の声が。
ズキズキ、痛みながら広がって。
匠は、わかってるように。
左耳の方に話しかけてくれる。
「やみくもに逃げるのと、闘ってから逃げるのとでは全然、違うだろ。オマエのは勇気ある撤退だ」
「…ナニそれ――」
匠の冗談めいた言葉に。
可笑しくなる。
「オマエの覚悟を初めて盗み聴いた時から、尊敬してたんだ。白い薔薇、送っただろ?」
白いバラの花言葉は、
“別れ”と“尊敬”
――尊敬の方、だったんだ