確信犯



匠が触れているのは。


私の髪だけなのに。


どこもかしこも、熱い気がする。






距離、という空間が。


間、という隙間が。


ナニかを生み出して。






今さらなのに。


私と同じキモチだ、と伝えられて。


羞恥に、襲われた。






「オマエがまた、ナニかを失うのかと思ったら…たまらなかった。もう二度と、こんな想いはしたくない。オマエにも、させないと誓うよ」






それは。


私の、低下した聴力のコト。






向かい合わせに座る匠は。


柔らかい髪を無造作にかきあげて。


寄せた眉根を、掌で隠した。






歪ませた頬は。


苦しそうで。


見てる私が痛くなる。





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