私と上司の秘密

課長は、最後のページまで見終わったところで

「よし、ちゃんと出来ている。
今度は、気をつけろ。
今日は、終わり。」


無表情な顔で、私を見ながらそう言った。


「ありがとうございました。
お疲れ様でした。」


今度は、課長に怒られることはなかったので、
緊張感がとけてほっとして、課長に
気づかれないように、声を出さずに溜め息を
ひとつ、ついた。


課長に背を向け、一歩足を踏み出し、自分の
デスクに戻ろうとした時、

「あっ、そうだ。
宮下、ちょっと、聞きたいことがあるんだけど。」

課長に呼び止められる。


私は課長の方にくるりと向きを変え、

「何でしょうか？」

『私、まだ何か、失敗でもあったのかな？』

自分の中に疑問符をなげかけながら、課長となるべく目を合わせないように、緊張して、ドキドキしながら、聞き返した。