私と上司の秘密
「離れたくないな。」

課長は、私の肩で小声で呟いた。


普段の課長とは思えぬ、弱々しい声だった。


「離れませんって。
それより、私から、離れないで下さい。」

「凛、嬉しいこと言ってくれるね。
俺は、凛が嫌だって言っても、もう離れる
つもり、ないよ。
そう、決めたんだよな、俺は。」


課長は顔を私に向けて話した。


顔が近すぎて、私の顔は、間違いなく、
真っ赤になっているはずだ。


『そんなに近くで、言わないで欲しい。』

抱き締められたままで、私は身動きも取れず、
ただ、課長に身を任せたままでいた。


心臓が沸点に達しそうなくらい鼓動が激しく
なる。


息が出来なくて、もう倒れる寸前だ。


そんな状態の中、やっと課長は、離れた。


離れるとさっきの気持ちとは違い、
課長が離れたことに、寂しさのような、
物足りなさのような複雑な気持ちになる。


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