私と上司の秘密
圭介の手が離れた瞬間、握られていた手の感覚は残っていたが、温もりが消え、寂しい気持ちになる。


しかし、誰かに見られてなかったかという不安感も同時によぎる…。


入り乱れ、気持ちの中、私の課のフロアに着く。


圭介は、すでに自分のデスクで書類の整理を始めていた。


他の人には気付かれないように、圭介をチラッと見る。


すでに、仕事の冷静な顔に戻っていた。


私が自分の席に着こうとした時、不意に後輩の清水君が声をかけてきた。


「宮下先輩、もう体調は良かったんですか?」

「っ、えっ、まあ。」

と曖昧な返事を返した。


と言うものの、本当は、つわりであんまり気分は良いことはない。


むしろ、出来ることなら早く家に帰りたい気分だ。


そんなことを考えていると、

「先輩、左手の指輪って・・・、」

清水君が私に話しかけてくるのを遮るように、
部長から朝礼の声がかかる。
< 267 / 299 >

この作品をシェア

pagetop