私と上司の秘密
「宮下先輩、これからも、教えて下さいね。
いろいろと…。」


私の方を見て、笑顔で話す。


それが、意味ありげな含み笑いにも見えた。


『先輩』と言われたことがなく、まるで、
他人事のように聞いていた。


「先輩って、美人だから、モテるんじゃない
ですか?
っていうか、もう、彼氏いたりして…。」


「っえ?」


今日が初対面の人に、突然、予想外のことを
聞かれたので、言葉に詰まる。


私は、こんな時、上手く切り返しの会話が
出来ない。


おそらく、頭の回転が遅いだと思う。


「初日からそんなお世辞、言わなくても
いいよ。
それに、全然モテないし、彼氏なんて
いないよ。」


一瞬、芹澤課長の顔が頭に浮かんだが、
別に付き合っている訳ではないし、

『課長との関係は、いったい何だろう?』


改めて考えた。


「あのー、聞いていますか。
僕の話。」


清水君の声に我にかえる。


「ごめん、ごめん。」


両手を合わせて、謝った。


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