襲撃プロポーズ【短編集】
「御主、何奴!」
「この輿を止める無礼承知の上か!」
しばらくして輿の外から聞こえてきた護衛の者の声。
どことなく緊張したその声に久保姫の肩が小さく揺れる。
ピリピリとした雰囲気が閉ざされた輿の中までも伝わってきて。
久保姫はぎゅっと強く目を閉じた。
するとこちらの声に合わせたように更に増えた馬の足音。
増えた、などという可愛らしいものではない。
まるで軍勢がすぐそこにいるような、そんな音が響いて。
護衛たちが息を呑むのがわかった。
戦場(いくさば)に出たことがない久保姫にもわかる。
人の気配がわからぬほど甘く育てられたわけではない。
辺りは緊迫した空気が流れているのだろう。
外に広がるは多勢。
それも相手に出来ぬほどの。