襲撃プロポーズ【短編集】
(本当に…一体どうしたというのでしょう…)
まさか輿入れの最中に襲撃されるなど思いもしなかった。誰も予想していなかっただろう。
(私なんかの輿を襲うなんて…)
何の意味があるのだろうか。
相手は一体誰なのだろうか。
そんな思いが久保姫の頭を巡る。
輿の中からでは辺りの様子を窺うことは出来ない。
見えない世界。
それがますます彼女の不安を煽る。
その時
パサ、
スッと開かれた輿。
突如差し込んだ強い日の光に久保姫はビクリと体を強張らせた。
輿を開けた人物の顔はわからない。
逆光でそこまで見ることは出来なかったのだ。
しばらく二人の間には静かな沈黙が続いた。
「…そなたが久保姫で、間違いないか…?」