襲撃プロポーズ【短編集】
自分のやるべきことはこの世に生まれ落ちた瞬間から決まっていると彼女は知っている。
御家存続のために有力な家に嫁ぎ世継ぎを産むこと。
それが生まれながらの務め。
男児には決して出来ぬそれ。
その務めを果たすためにたくさんの教育を受けてきたのだから。
恋愛結婚など考えたこともなかった久保姫。
今回の輿入れも、相手が自分を選んでくれたことに感謝すべきだと。
そう思うべきなのだと考えていた。
(ですが…)
それでもどこか落ち着かない久保姫の心。
その原因はある噂のせいであった。
久保姫の気掛かり。
それは彼が"美男子"であるという噂のせい。
(美男というのはどういう…美しいお顔…ということなのかしら…?)