襲撃プロポーズ【短編集】
しかし、久保姫の憧れはどちらかというと別の方向にあった。
(男らしい方だといいのですが…)
ハァ、と艶めかしい溜め息が久保姫の唇から落ちる。
そう。彼女の理想は男気に溢れる男。
戦から必ず戻ってきてくれるような安心感のある男なのだ。
それが彼女の描く理想の男性像だった。
少しくらい無愛想でも、要領が悪くてもいい。
例え天下を狙えるようなものでなくても構わない。
そんなものは望んでいないのだ。
彼女は決して天下人の妻になりたいわけではない。
ただ、この身を強引にでも奪い去ってくれるような。
その腕で引き寄せて、その瞳で心ごと射ぬいてくれるような。
そんな強い体と心を持った人だったなら。
(あの、鷹狩りのお方のような)