記憶ノ時計
目を開けたら
「綾那?!綾那?!」


目を開けたら、男の人が私の顔をのぞき込んでいた。


今私の名前を呼んでいたのはこの人?


私はうっすらと開いたまぶたを一生懸命こじ開ける。


…まぶしい。


「綾那!よかった。目が覚めたのか」


私が体を起こすと、男の人二人が私を見て安堵のため息をついた。


ここは…病室だ。どう見ても、ここは病院の一室だった。


男の人の一人が、私に言った。


「綾那。自分がわかるか?俺たちのことはわかるか?」


質問されて、私はコクリとうなずく。


頷いたとき、首に激痛が走った。


「私は…加納 綾那…。あなた、たちは…」


私はベッドの横から身を乗り出している二人を見上げた。


「…わからないわ…。自分の、自分の名前しかわからない…」


すると、男の人二人はものすごく驚いた表情を見せた。


「綾那…俺たちのことがわからないのか?」


私はゆっくりと頷く。誰なのかわからない。見たこともない人たち。


「ごめんなさい…。私…」


「い、いいんだよ!まだ起きたばっかりでちょっと記憶がごちゃごちゃになってるだけだよ」


背の高いほうの男の人が私の背中をポンポンとたたきながら言った。


記憶…。私、記憶がなくなっちゃったの?


自分じゃわからない。


でも、自分が誰なのかもわからない。
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