記憶ノ時計
時は昨日の夕方。


私の退院が明日に迫り、涼馬と怜馬は私の病室で話していた。


「涼馬。俺、綾那が心配だよ。だって、記憶がないのに女の子を独り暮らしさせるなんて、突然記憶が戻って混乱した綾那がどうかしちゃったら、俺たちすぐにかけつけられないじゃない?」


「ああ…。俺もそれを考えていたところだ。それで、こうなったら俺たちの家に綾那を呼ぼうと考えている」


「え?!」(綾那)


「それなら安心だね!俺たちの家は腐るほど部屋あるし、お手伝いもいっぱいいるから万が一綾那になにかあってもすぐ助けられる!」


「よし!決定だ!いいよな、綾那」


涼馬がメガネをきらりと光らせてこっちを振り向いた。


私は焦って涼馬と怜馬を交互に見た。


二人とも、私に拒否権はないことを目をキラキラさせて訴えていた。


「……お邪魔させていたただきます…」


「よし!俺は明日大学昼からだから、綾那は俺が家まで連れていくよ」


「そうだね。よろしく、涼馬」


二人で勝手に私の今後を決められたことに少しがっかりもしたけれど、確かに私はいろいろ記憶がないのに、一人で暮らすのはあぶないよね…。
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