記憶ノ時計
もう一つの真実
「あーやーなー!!たっだいまーー!!!」


高校から帰ってきた怜馬が私の部屋に飛び込んできた。


「わっ?!」


ぎゅうっと後ろから抱きつかれて私は驚く。


そのとき、さっきの涼馬の言葉を思い出した。


『綾那。俺たちは恋人同士なんだよ』


驚いた。だって、ただのおさななじみかと思ってたもん。


確かに…タクシーの中で見た涼馬の笑顔には少しドキッとしたけど…。


「綾那?どうかしたの?」


怜馬が私の顔を後ろから心配そうに覗き込んだ。


「だ、大丈夫!てか、顔近い!」


私は怜馬の体を思わず突き飛ばす。すると、怜馬はちょっとよろけてから、私を見つめた。


「綾那、俺にドキドキした?もしかして」


私はカァッと顔が熱くなるのを感じた。


「な、なに言って…?!」


「…ははは。なにそんな顔赤くしちゃってー。冗談だよ冗談」


怜馬は私の背中をバンバンたたきながら笑った。


「ひ、ひっどーい!いきなりそんなこと言われたら反応しちゃうでしょ?!」


「ホンットおもしろいなー綾那って。記憶なくしても、変わらないよね」


涙を流しながらヒィヒィ笑ってる怜馬に、私は顔を真っ赤にして怜馬の頭を思いっきり叩いた。


すると、コンコンとドアがノックされた。


「はーい」


私が返事すると、ドアが開いて斉木さんが入ってきた。


「あら、怜馬さんここにいらしたんですか。綾那さんも怜馬さんも、もうすぐ夕食ですから、食堂に集まってくださいね」


それだけ言うと、斉木さんは部屋を出ていった。


「だって、怜馬。行こうよ食堂。私場所知らないし連れてって」


「そりゃなー。綾那方向音痴だし、ついてかないと迷っちゃうだろ」


「失礼だなーさっきから。こんな広い家誰でも迷うって!」


そう言いながらも、私たちは二人で食堂へと進んだ。
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