BEAST POLICEⅡ
その時だった。

「コイツは眼福だなぁ」

震えながら階下への脱出を試みていた美奈の耳に、そんな呑気な声が聞こえた。

「姉ちゃん、そんなカッコで大股広げてたら…ははっ、中が丸見えだぜ?パンツ穿いてないのはそういう趣味なのかい?」

肩越しに下を見ると、一台の黒いベンツが停車していた。

その後部座席の窓から、一人の男がこちらを見上げている。

白髪混じりの短髪、顔には皺が刻まれており、かなりの高齢である事が窺える。

唇の右側に、縦に走る傷痕。

刃物か何かで斬られた古傷だろうか。

くっきりと残っている事を考えると、相当に深い傷だったのだろう。

「姉ちゃん、中毒者から逃げてる途中かい?そんなとこからまぁ…ご苦労なこった」

男は笑った。

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