BEAST POLICEⅡ
何で?

それは美奈が訊きたい事だった。

「何でって…私、殺されるかもしれないんです!もうそこまで中毒者が迫ってて…」

「ああ、それで?」

男は首を傾げる。

「……」

愕然とする美奈。

男はふざけている様子はない。

本心から、理解できていないという様子だった。

「姉ちゃん、アンタが勝手にそんな場所から逃げようとしてんだろ?何で俺が手助けしてやらなきゃいけねぇんだい」

「そんなっ…」

本気で言っているのか?

女が一人で、こんな危険を冒してまで中毒者から逃げようとしている。

そんな場面に遭遇したら、何とかして手を差し伸べようとするのが普通の感覚ではないのか。

「なぁにを甘えた事言ってんだい」

馬鹿な事を言ってんなとばかりに、男は後部座席の中で笑った。

「助けてって言やあ、誰かが手ぇ貸してくれると思ってんのかい。どういう育ちしてんだろうな、最近の若い娘は。いい歳して恥ずかしいとは思わねぇか?誰かが助けてくれるのが当たり前だと思ってるから、若い女はやだねぇ」

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