BEAST POLICEⅡ
世界中で話題となった『噛みつき男』がいた。

W杯ウルグアイ代表、スアレス。

試合中だけで三度目というから、最早噛みつき常習犯である。

「プロボクサーのマイク・タイソンも試合中に噛みついていたが、彼らは闘争本能が解放されやすい性質なんだろう…そもそも人類の祖先は、手足でなく噛みつきが主な攻撃手段だった。『噛みつき』は、原始の記憶まで本能が解放された結果とも言える」

そんな『本能解放』状態に、あらゆる人を陥らせるのがバスソルトなのだ。

そしてこの薬は、見ての通りもう日本に入ってきている。

12年頃から、広島や埼玉などで発見されている。

バスソルトの代表的な成分であるMDPVは、12年から麻薬指定され、同じくカチノン類も包括指定されたが、今後も恐らく分子構造を少し変えてくる。

そもそも、これだけ取り締まっていてもMDMA(合成麻薬。通称エクスタシー)が一掃されないように、ドラッグの売り手は“市場”をとことんしゃぶり尽くそうとする。

寧ろ危険ドラッグで広まった市場を狙い、暴力団の参入が本格化する可能性も高いと思われる。

最近の事件を受け、危険ドラッグの取り締まりは厳しくなっている。

しかしここで心配なのが、有名な警視庁と厚労省・麻取の仲の悪さである。

警察は広い捜査ネットワークに、麻取には少数精鋭のプライドがある。

両者が積極的に協力するのはまだ難しい。

「そんな事言ってる場合じゃないんだがな…」

巽が毒づいた。

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