BEAST POLICEⅡ
両手で巽の革ジャンを摑み、大きく口を開き、口臭を漂わせながら顔を寄せる男。

その眼は正気ではない。

明らかに常軌を逸している。

「おい…止せ」

それでも数々の修羅場を潜ってきた巽は落ち着いている。

摑みかかられたまま、男の股間を膝で蹴り上げる!

急所を蹴られれば、大抵は怯む。

ところが。

「っ?」

その男は全く動じる事なく、尚も巽に顔を寄せる。

まるで食らいつこうとしているかのように。

痛みを感じていないかのように。

その行動は、人間の理性的なものではない。

まるで獲物を前に肉を食いちぎろうとする獣のようだ。

事実、男は咬みつこうとしていた。

巽の肉を、食おうとしていた。

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