恋愛ジャーニー
「……そう、ですね」
「ビルもなくて車も少ないし、空気が本当に澄んでいて美味しいです」
「……はあ、そう、ですか」
相槌すら、愛想よく打てない自分が悔しい。
今まで、友達作りとか、人間関係を築くのをサボってきたツケが、こんなところで回ってくるなんて。
……独り言なら、得意なんだけどな。
「それに比べて東京は……息苦しいところです」
彼は聞こえないほど小さく溜息をついた。
「……東京から、いらっしゃったんですか?」
思わず、聞いてしまっていた。
あまりにも自然に口をついて出ていたから、自分でもびっくり。
「………」
相手からの返事が遅いことが気になって、ふと顔を上げ、左隣に座る彼の顔を見ると
少し驚いたような表情で私を見ている彼と目が合った。
「……私、なんか変なこと言いました?」
気まずくなった私は彼から目をそらして小川に視線を戻した。
「いえ、ただ、ずっと相槌だけだった貴女から急に質問が来たことに驚いたのです」
「なんかすみません」
「いえいえ、嬉しかったんです」
『嬉しかった』という言葉に、内心動揺を隠せない。
だって今まで私と初めて話した人は、私のあまりにも薄すぎる反応に嫌気がさして去って行ってしまう人ばかりだったから。