幸福論
「あなたは私を見てくれていないわ」

「見ているよ」
嘘をついた。

「誰か気になる人がいるんでしょ?ちがう?」

「いるけれど、付き合っているのは君だから」
いない、と嘘をつくことも考えたけど、口から出たのはこの言葉だった。




彼女は涙を流した。
声をあげて泣いた。


彼女のアパートの部屋が思ってた以上に汚れていた。

いつもとは違っていた。

冬が足音をたてて近づいてきたころ、僕と彼女は別れた。
< 3 / 25 >

この作品をシェア

pagetop