名もない手紙
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「菜々子、おはよう」
「風花(フウカ)、今日早いじゃん」
サンサン太陽が照る6月。
高校2年生、葉月 菜々子。
普通の高校に通う普通の女。
これっていう取り柄もないし、
特徴もない。
平凡な日々が当たり前で、
そんな毎日が大好き。
「いつも早いでしょうが」
「えー、そうだっけ?」
あははは、と笑いながら
風花と通学路を歩く。
「ういーっす」
「おっはよー!」
そこに、ダダダッと
誰かが走ってくる。
その2人はあたしたちの前で止まり、
振り返って立ち止まる。
櫻井 蓮と高橋 直斗。
風花も合わせて、この3人は
中学の時からの仲。
放課後遊んだり、休みの日に
4人で出かけたりしていた。
「直斗、朝から暑苦しい」
「な、何言ってんだお前!」
直斗はすごく明るい人で
いつもムードメーカーだ。
どんな時もそばで元気付けてくれて、
いつも笑いかけてくれる。
「菜々子、何それ」
「何?」
「お前が猫のヘアピンって、ネタだろ」
「は、ちょっと何。悪い?」
蓮はいつもあたしを
からかっては笑う。
だけど絶対傷つけたりしない。
すごくすごく優しくて、
いつもそばにいてくれる。
「あ、直斗くんだよ」
「蓮くんも。あの4人、仲良しだよね」
蓮も直斗も、すごく人気者。
イケメンだとか騒がれてて、
高校でのモテ率は半端ない。
でも、なぜか。
あたしは、好きにならない。
何でかは分かんないけど。
別に、このままの関係でいられたら
いいかな、みたいな。
そんな風にしか考えた事ない。
「じゃ、またな」
「うん。蓮、授業中寝るなよ?」
「うっせ。お前もな」
1年生の時、奇跡的に
4人とも同じクラスになって。
2年生ではなぜか、
あたしだけ隣のクラスに。
今まで風花以外、
そんな関わってこなかったから、
おかげで親しい友だちゼロ。