名もない手紙
別に1人ぼっちなわけじゃない。
クラス全体仲がいいし、
みんな声をかけてくれる。
お昼もわいわい食べるし、
変に気も遣わない。
「菜々子ちゃん、行くよ~っ」
「はーい」
移動教室だって、
一緒に行くし。
「ご飯食べよ!」
「お腹すいたね」
お昼ご飯だって一緒に食べる。
そんな毎日が続いて2カ月と少し。
たまには1人になりたい時もあって。
「ふぅ~、」
最近あたしは、
少し不良みたい。
授業を抜け出しては、
決まってここに来る。
使われなくなった、
第2音楽室。
いわゆる、旧校舎。
あたしの学校は、
旧校舎の一部と新校舎を
合体させて造られている。
といっても、残された旧校舎部分には、
音楽室と資料室だけ。
3階の1番奥に存在する、
第2音楽室は、今や誰も
使用していない。
そんな場所を、
あたしは自分の息抜き場所として、
勝手に使っている。
別にピアノが弾けるわけじゃない。
ギターやバイオリンが
出来るわけじゃない。
だけど、ここから見える景色が、
不思議とあたしを落ち着かせてくれる。
そんな第2音楽室が、
あたしの大好きな場所。
「眠いな…」
窓際に椅子を置き、
風に当たりながらうつつとしていた時。
ふと視線を下に向けると、
白い封筒が落ちていた。
「何、あれ」
汚れてもいない、
真っ白な封筒に。