名もない手紙





「嘘…、」




文の構成もばらばら。


ただ気持ちを書いてる、


そんな手紙。


読んで、絶句。


信じられない。


だって、この手紙を書いた人って。


同じクラスの、


中澤陽介だったから。


中澤くんは、あたしと同じ、


2年1組の生徒で。


すごくこの手紙が似つかわない。


何で似つかわないかって。


彼は。


中澤くんは。


クラスの中、いや学年の中でも


すごく悪いと評判で。


だから、なんというか。


中澤くんが書いたなんて、


想像もつかない。


だけど書かれた名前は、


彼の名前で。


あたしはびっくりして、


言葉も出なかった。






「あの、中澤くんが…」






あたしはどうしたらいいか


分からず、とりあえず


ポケットに入れて


持って帰ることにした。






「菜々子!」





「蓮、直斗。どうしたの?」






あれから、帰りのHRを終え、


帰り道を1人で歩いていると


後ろから2人が走ってきた。






「どうしたのじゃないよ」




「どうしたの、はお前だろ。先に帰ったりなんかして」




「あ、別に」







あたしは手紙のことで動揺して、


いつも4人で帰るのに、


思わず1人先に帰ってしまった。






「風花は用事あるから残るって言うし、お前はいないし」





「これから先帰る時は連絡しろな?」





蓮も直斗も、すごく


心配してくれた。


申し訳ないんだけど、


でも頭の中は手紙のことで


いっぱいだった。





「じゃあ、また明日な」





「うん、またね」






いつも家の前で、


2人とばいばいする。


家の中に入ると、


すぐ部屋に入って机に向かった。


鞄から、中澤くんが書いた


手紙を取り出すと。


もう1度読み返し、


返事を書くことにした。




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