異次元バスでGO!
 本当に? まさかぁ……。ないって、ありえない、でも……もしかして。


なんで、こんなのに乗っちゃったんだろう。また明日マリエちゃんと話したら、もしかしたら、また違う反応があったかもしれない。妹もガラス細工を破壊したのを、反省してるかもしれない。お父さんも、屁をしなくなるかもしれない。
 目頭が熱くなる。

「あんた方。乗ってきた場所になら、帰ることはできるが」
 白髭老人の穏やかなひそひそ声が、鼓膜に届く。


佑香が首を捻って後ろをむくと、老人は髭をとかしながらフムフムと頷いている。


「戻れるん、ですか?」

老人はニッコリした。タマゴは、面白い悪戯を思いついたみたいにニヤニヤしている。

「いいかあんた方、窓の外をよぉく見るんだ。何か、あんたがたの町で見た覚えがあるもんはないかね」


 佑香は、窓の外を焼き芋屋の車がかすめるのを発見した。

お父さんによく買わされにいくやつだ! しかし間もなく景色は切り替わる。


「見覚えのある景色があったら、ほれ降車ボタンをお押しなさい。反則なんだけどね」


 老人は茶目っ気たっぷりにウィンクした。

 佑香は中学生と顔を見あわせた。

「お兄さんも、あたしと同じとこから乗った?」

「うん」

 二人で、ガラスに額をくっつけて目を血走らせる。猛スピードで組み変わる光景に頭がくらくらする。

「あ」

 佑香は素早く降車ボタンをタッチした。よく行くスーパーの建物が見えたのだ。


 激しい音をたてて、ブレーキがかかった。


 運転手達が口笛を吹いて、豪快に笑う。

「お降りのさいは、お忘れ物のないように」 
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