異次元バスでGO!
 町外れの鉄塔オブジェに、ときどき不思議なバスが来るらしいという噂は、ここに住んでいたら誰もが一回は耳にする。



 佑香が、親友だったマリエちゃんと、その噂を聞いたのは、小学二年の春だった。


よく晴れた日曜日で、休みの日なのに、校庭にはボールで遊ぶ上級生が沢山いた。


佑香達は同じクラスで、少し前に親友になったばかりだった。

初めての親友で、親友がなんなのかよくわからず、何をすればそれらしいのか考えまくったあげく、とりあえず長い時間一緒にいようということになった。


というわけで、その日も何をするでもなく二人で校庭の隅の遊具のあたりで、のんびり座っていた。
 普通に遊べばよかったのに。と、当時のことを思いだすたびに佑香はおかしくなる。

他の子みたいに、貸し出された一輪車に乗ってみたり、鉄棒の練習したりして。
 これはマリエちゃんも同じだったようで、幾度かこの時のことを話題にして笑いあった。


 小さな佑香達が退屈に疲れてうとうとしかけていると、ふと日射しがかげり、女の子の緊張した声が落ちてきた。

「二組のいなくなった子、あのバスに乗ったかもって」

 顔をあげると、近くにあったジャングルジムの天辺に、二人の上級生が座っていた。


「見た子がいるって」

片方がひそひそと言うと、もう片方がすっとんきょうな声をだした。

「見たって、バスに乗るのを? バスも見たってこと?」

「ちがくて。鉄塔のほうに歩いてくとこ、見たんだって」

「えー、それだけじゃわかんないよ。こじつけじゃん」


「それって、五年生の岬(みさき)ちゃんのこと?」

 マリエちゃんが、突然そう言ってジャングルジムに駆けよった。

 上級生達はぶらぶらさせていた足を止めて、佑香達を見おろした。

「そうだけど」

「マリエのおねぇちゃん、岬ちゃんと親友なんです。なんか知ってるんですよね? 教えてください、バスって!?」

一生懸命訴えたマリエちゃんに、上級生二人は困惑した様子になる。
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