異次元バスでGO!
 何秒か悩んだあと、バスの話を出したほうの上級生が嘆息した。


「んー、あたしが言ったって言わないでね」

そう前置きして、「こういう噂がある」と教えてくれた。


 町外れの派手な鉄塔は、ある不思議なバスのためのバス停で、そのバスというのは絶対に『どこかへしか行けない』バスならしい。


町には時々『ここではないどこか遠く』に行きたくなる人がいて、そういう人はその鉄塔に行くらしい。


もし運が良ければその不思議なバスに乗れて、どこか遠くに行けるらしい。


だけど、二度と帰ってこられない――。

「それでね、その岬ちゃん? が、そのバスに乗ったっぽいって話。ハブられてたって聞いたことあるし」


「はぶら?」

 マリエちゃんが首を傾げると、上級生二人は、ごめん気にしないでと苦笑した。

 当時、小学校で行方不明になっている子がいたのは知ってたけど、それがマリエちゃんのお姉さんの親友だとは、佑香は知らなかった。


身近にあった大事件に、びっくりしたものの、そのときの佑香には上級生がどういった種類の話を教えてくれたのかよくわからなかった。


 学年があがるにつれて、バスの噂はよく耳にするようになった。


真面目に聞くような事じゃなかったと、わかるようにもなった。


要するに、トイレの花子さんみたいな話なんだと。


岬ちゃんという子は、いなくなったまま今でも出てきていないけど――。


 初めて噂を聞いてからのしばらくは、佑香とマリエちゃんは、岬ちゃん探しにやっきになった。


でも、薄情なことに、すぐに飽きてしまった。
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