お前だけ。







ギュッ



「離して…ッ」


「………」


「ッほっといてよ…!!」


「ほっとけねぇよ!!!」


「っ」



普段怒鳴ったりなんかしないタケが珍しく怒鳴ったため、びっくりする郁。



「好きな女が泣いてんのにほっとけるわけねーだろ…」


「ッ…!」



ギュッて抱きしめる力が強くなる。



「俺は…お前が俺に祥平の事相談してくる前から…ずっとずっと前から…っ郁の事が好きだったんだよ…!!」



タケが

私を

好き…?



「っ毎日毎日京子が祥平に抱きついたりしてんのを見て郁が悲しい顔する度に祥平を諦めてくれるんじゃないかって期待してたんだよ!!俺…、最低だろ…ッ」



耳元でタケの鼻をすする音が聞こえる。



「タケ…」


「こんな時に…ッごめん…」


「……」



私が祥平の事で泣きそうになってる時、タケも私の事で泣きそうになってたんだね



私は何も言えずにただ泣いていた




―そんな時。



「―郁?」
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