ぬくもりを感じて
手作り弁当がんばります!
凛花は帰宅してからすぐに台所へ行き、よねさんに泣きついた。


「よねさん、私に煮物を教えて!
よかったら和食もいろいろ教えてほしいの。」


「あらあら、どうなさったんですか?」


「私・・・日本人じゃないの。
書道も家庭科も国語もできないの。

こんなに悔しい思いしたことないのに・・・今日はすごく悔しくて、悲しかったの。」



「あっ・・・日本人でもできない女の子はいっぱいいますよ。
凛花さまは16才じゃありませんか。

うちの娘なんて20才超えてるのに、料理はダメダメですよ。
そのうえ、凛花さまのようにできないのが悔しいともいいません。」


「他人よりできないのが悔しくないの?」


「悔しいかもしれませんが、不得意なことは仕方ないって思ってる子の方が多いんですよ。」


「でも、でも・・・私はできないのがすごく悔しい。
他のお友達にきいたの・・・包丁の持ち方や切り方から教えてもらったの。

私、そんなの初めてだから素直にきけなくて。
他の科目なら私の方が絶対できるのに・・・できないことがあるのが悔しい。」


「まぁまぁ、負けず嫌いなんですねぇ。」


「わかってるわ、言いたいことくらい。
私はかわいくない女の子だって言いたいんでしょ。
女王様ぶってばかみたいって思ってるんでしょう。」



「ああ、すっげぇバカだな。
誰がかわいくない娘だと言ったのかは知らんが・・・わかろうとして努力する姿は、真面目で一生懸命で応援したくなる素晴らしい姿だ。

それに君は女王様ぶったりしてないだろう。
帰ってきてすぐによねさんに何ていった?」


「よねさんに和食の作り方を教えてほしいって・・・」


「そうだろ?
自分はできないから教えてくださいと頼んだ。
確かに、教えてもらって練習を積まないとおいしいものはできないけど、ひとに教えを乞うことはカッコ悪いことじゃない。

ってことで・・・野菜の煮物だったよな。
さ、やってみようか。」


「えっ・・・!?先生どうして?」


「あら、凛花さまの今日のお弁当をおつくりになったのは智樹さまですよ。
ふだんの夕食は確かに、私が用意はしていますけど、智樹さまは私より料理が上手なんですよ。」


「うそ。先生が・・・キャラ弁?
かわいいお弁当を作った?
これから野菜の煮物を作れるの?」


「僕は兄と違って金儲けの仕事っていうのが苦手だったんだ。
だから、いつも兄さんや父さんに食事を作ってやるのが日課になった。

母が小さい頃に亡くなっていたんでね。」


「あ・・・すみません。失礼なことを言いました。」


「いずれわかることだから、気にしてない。
さあ、教えてやるから、まず着替えてきなさい。」


「はいっ!」
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