ぬくもりを感じて
遠藤の家庭訪問の話をきいて、智樹はしばらく固まった。

そして・・・


「どうして遠藤先生がうちに家庭訪問なんて?」


「先生が、あっ、コホン・・・智樹さんが学校で私のこと凛花って呼び捨てにしたから追求されちゃって・・・。
家でお世話になってると言ったら、養護教諭として家庭訪問しておかなくてはってことになっちゃって。」


「ぬぁっぁぁぁあああにいいいーーーーー!」


「はぁ・・・うっかりして凛花って言ってしまった僕の責任だぁ。
仕方ない。あいつににらまれてしまうと、なかなか学校でやりにくいからなぁ。

素直に家庭訪問を受けるしかないな。」


「すみません・・・私がいるから、ご迷惑ばかり・・・。」


「だから、迷惑じゃないから。
ただ、うっとおしいんだよ。あの人・・・。

みんなの生活を覗き見して楽しんでるみたいなとこあるだろ?
ここにきて、じろじろ見て何か学校で言われるのは嫌だなぁっと思ってさ。」


「それは・・・言えますね。
でも、お邸は広いから、ふだんよねさんのそばにいれば大丈夫です。
たぶん・・・」


「なぁ、ちょっときいてもいいか?」


「何ですか?」


「中学生のとき、ボディガードがついていたのか?」


「え、ええ。」


「凛花の家はそんなに裕福で重要人物の家庭だったのかな?」


「わかりません。私は普通のビジネスマンだとばかり思っていました。
でも、学生の頃、小学校の終わりくらいから、ボディガードがつくようになって、毎日守られる日が当たり前になって・・・。」


「セルジュって人はお気に入りの人だったのか?」


「あ・・・はい。」


「もしかして好きだった?男として・・・」


「たぶん・・・。でも、両親が亡くなってからいなくなってしまったんです。
私が今ここにいるのも、知っているのか、知らないままなのか・・・。」


「おませさんだったんだな。
セルジュって人はボディガードって職業ついていたんだから、君から見ればすごい大人だろ?」


「そんな感じはしなかったんですけど・・・たぶん年齢は智樹さんくらいかな?」


「ほぉ・・・おじさんだとか言わないんだ。」


「いいませんよ。
智樹さんは言われるんですか?」


「ま、まあな・・・。中学生あたりだったら言われるだろうなぁ。
学校じゃ、家にいるよりもっとむさいしな。」


「どうして学校に居る時の方がむさくるしくしてるんですか?
せめておうちにいるときくらいにしていれば、遠藤先生にも負けないと思いますけど。」


「勝ち負けはどうでもいいんだ。
僕は、学校って場所で恋人になる人を選ぶつもりはないからね。」


「過去に付きまとわれたりしたことがあるんですか?
あ・・・無理に答えてくれなくてもいいです。・・・ごめんなさい。」


「ああ。そのとおりだ・・・。
付きまとわれた顛末が、生徒1人が大怪我をしたという大失態でね。
普通の学校の先生だったら、クビだろうね。
結局、兄貴の顔でここにいるけど・・・。」


「そうだったんですか・・・。」
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