ぬくもりを感じて
その日は凛花は疲れていたこともあって早々と寝て、翌朝、元気に出かけていった。


朝、担任は出張で・・・という理由で副担任の水戸藻先生が朝の会をした。


(そういえば、今朝はよねさんが朝食係だったわ。
朝が早かったのね。)


いつもと同じように授業がすすみ、昼休みにはデートのお礼をしようと保健室へ行った凛花だったが・・・。


ガラッ!


「遠藤先生!昨日はいろいろと・・・あれ?お客様だったの、お礼言いにきただけだから、私はもどります。
それじゃ・・・」



「お、おい、待て!よく見てみろって。」


「えっ・・・え?!?!?!?!?!?ぉぉぉおおぇぇぇええええ!
ま、まさか・・・満原先生?
どうしたんですか。

なんか・・・すごく若くなってませんか?」


「そ、そだねぇ・・・久しぶりにきちんとカットしてもらったら、こんな顔だったのを思い出した。」


「ちょ、ちょっと・・・何年床屋さん行ってなかったんですか?」


「それで、ここまできたけど、僕だとわかったのは古株の風紀の永井先生と教頭、そして遠藤先生くらいだったんだけど、やっぱりまずい気がしてねぇ。」


「どうして、またきれいにしてきちゃったんですか?
お見合いでもされるとか?」


「いや・・・とくに理由はないけど・・・でも、まずいから眼鏡はかけておくよ。」


「俺は逆効果だと思うんだけどな。」


「私もそう思う。」


凛花と遠藤がいったとおり、1日で智樹は女性からの人気を集めてしまった。

放課後も女生徒と女教師が群がっている状態で、いつもより帰宅も遅る始末となった。



「お疲れ様~!」


「ふぅ・・・ただいまぁ。やっぱりヒゲを剃るべきじゃなかったなぁ。」


「智樹さん、どうして急にまたアイドルやろうと思ったんですか?」


「アイドルなんてやる気はない。
僕としてはそろそろきちんとした身なりになってもいいかと思っただけだ。」


「それで、追っかけ復活なんですね。」


「おいおい・・・勘弁してくれよ。
そういうのは遠藤の方が慣れてるだろうに。」


「遠藤先生は慣れてるというより、向き合っておられるんじゃないですか?」


「えっ?」


「だって保健室はいつも女性でにぎわってますよ。
でも遠藤先生はマイペースで、ご自分が気に入った話題とか用事のある人とか、きちんと選択したり整理したりして、順番にお話されていますよ。

智樹さんは逃げることばかり考えておられるんですね。」


「僕は逃げてなんか・・・けど、逃げてることになるな。」
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