ぬくもりを感じて
話をしたことから考えて、凛花の言うことは間違っていない・・・そう思った智樹は凛花の目の前で電話をかけた。

ここに住む許可を得た方がいい人物に電話がつながった。

僕の兄だ。父は入退院を繰り返していて静養中なんだ。


おそるおそる、凛花は電話をとった。


「もしもし、君が凛花さんかな?」


「は、はい。はじめまして。
あの、私ほんとにここに住まわせていただいてかまわないんでしょうか?」


「ああ、好きなだけ住んでもらっていいよ。
お金だってお兄さんから振り込んでもらえる約束をしている。

遺産の整理が終わったらきちんと払ってもらえるから安心したまえ。」


「ほんとにありがとうございます。」


「あんまり気にしないで、好きなように生活するといいよ。
君に会えることを楽しみにしているよ。

それじゃ、ちょっと智樹にかわってくれないかな?」


「は、はい。」


凛花が電話を智樹に手渡すと智樹が浮かない顔をして返事をしていた。


「事件のことは絶対に話すなよ。できるだけ瑞歩のことも話すなよ。
おまえの役目は凛花ちゃんを素敵なレディとして送り出すことだからな。

高校卒業するまではじつの妹だと思って大切にしてやるんだ。いいな。」


「ああ・・・。でも女の子の扱いは・・・僕はちょっと・・・」


「やれ!ご両親がうちの会社が投資している先の図面を持ったまま亡くなってしまったんだぞ。
兄の瑞歩が原因究明のため動いているし、おまえには凛花ちゃんの世話をしっかりやるくらいしかないだろ。

おまえはうちの事業をやらないんだからなっ!
わかったか。いいな、彼女をまっすぐにお育てしろ!じゃ、またな。」



電話を置くと智樹は凛花の部屋へと案内した。


「ここを使ってくれ。
いちおう、高校生として使い勝手のいいものはそろえたつもりだ。

明日から地元の高校へ行ってもらう。」


「あの、私は・・・高校はいいです。
それより、仕事を探さないと・・・。」


「何を言ってるんだ!学生の本分は学業だろ!
兄もお金は瑞歩から入ると言ってくれてただろ。

とにかく君は学業に専念しろ。
それと、何かわからないことがあったら正直に言え。
べつの科目でも教えてやるから。」


「あなたは・・・何の先生なんですか?」


「僕は生物を教えている。
でも化学でも数学でもいい。
そのほかの科目でもかまわないぞ。

やる気がある生徒に文句を言ったりはしない性格なんでな。」


「そ、そうですか・・・。
で、なんか私はもうここでの生活を決められてるっぽい感じが、お兄さまのお電話から感じられたのですが、明日から・・・いえ、これからどうしたらいいんでしょうか?」


「明日から学校だ。必要なものが机にあるから全部名前とか記入しろ。
それから住所はこれ。
学校提出書類がけっこう枚数あるだろ。

今日の明日で全部出さなくてもいいが、なるべく早く提出すること。いいな。」


「はい・・・。」
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