ぬくもりを感じて
それは凛花にもわかっていた。
智樹が自分のために汚い印象を消そうとして無精ひげその他みだしなみをよくしてくれたのに、いっしょに住めなくなったことや、学校でファンがいっぱいできてしまって学校で話すことがなくなってしまった。


「私には満原先生の考えていることはわかりません。
たぶん、きれいにしてると1年生に追いかけまわされると思って、やめたんだと思います。」


「そうだね。君は彼がきれいでも芋臭くても態度は変わらないからね。
それがわかったから、安心してるのかもしれない。」


「ど、どうして、私の態度でそんな・・・。」


「へぇ、そんなふうに言っちゃっていいのかい?
彼は普通にしていれば、ものすごくモテるよ。
しかも、あの満原大樹の弟だ。

今は自分の給料でやっているといっても、この学校だって満原家のものだってのもある。
お父さんにもしものことがあれば、どうなるんだろうね。」



「そんなの私には関係ありません。」


「関係ないと言い切れるんだね。」


「ええ。じゃあ、そろそろいいかなぁ・・・。」


「な、何がですか?」


「俺が積極的になっても。
凛花ちゃん、今夜デートしないか?」


「そ、それは・・・そんな・・・困ります。」


「俺は真剣だよ。ちょうど今年は30になってしまうし、年の離れた彼女はとってもかわいい。」


「だって、先生だって人気ものだし、私は先生のことそんなふうに見たことなんて・・・ないし。」


「じゃあ、これからはひとりの男として見てくれないかな。
君だって、まだ秘密はいろいろとありそうだしね。」


「遠藤先生・・・私はべつに何も。
それに、恋愛とかまだ・・・考えてなくて。」


「そうかな?
じゃ、セルジュって何度か寝言で呼んでたのは・・・彼氏じゃないのかな?」


「ええっ!!私そんなこと。
まぁ、直接きいたのは満原先生だけどね。

寝言にまで登場して、しかもかなりレギュラー化してるらしいじゃないか。」


「そ、そんな・・・。
彼は、私の両親がつけてくれたボディガードで、いつもそばにいてくれて・・・。
両親が亡くなった日をきっかけに突然消えてしまった。」


「すごく悲しかった?
両親にボディガードがついていなくて事故死してるのに、娘にはボディガード。
おかしな家なんだね。」


「それは・・・。」


「君はオックスフォード大の助教授まで飛び級であがった人。
専門は、爆破装置につける安全装置について。

それが不完全だと爆破装置はただの爆弾だ。
君がいないと、山間部の安全を守るはずのチームもただのテロ組織になる。」


「ど、どうしてそれを!!」

< 32 / 60 >

この作品をシェア

pagetop