ぬくもりを感じて
遠藤は笑顔で楽しんでいるかのように話してくる。


「浩太郎情報はけっこう精度が高いんだよね。
君のお兄さんの婚約者と名乗る女性たちは、きっと安全装置について書かれている論文でも探そうとしたんだろうねえ。

そしてどんなに探してもそれは出て来なかった。
探しても探してもない・・・なぜなら、それは、君の脳に書かれてあることだから・・・。
な~~んちゃってね。」


「どうして?
どうして遠藤先生はそんなふうに理論づけちゃうの?

いったいあなたは何者なの?」


「今はまだ言えないんだ。ごめんね。
でも、1つだけ言っておく。

俺は君の敵じゃない。どっちかといえば味方だと思ってほしい。
君が死んでしまったら生きていけない程、君のことは気に入ってるからね。」



「えっ・・・どういうこと?」


「まぁ、君はまだ高校2年だし、青春時代を楽しめばいいさ。
俺は教師で生徒である君を守っていく立場。

もちろん満原先生もそうだ。
彼も俺と同じ・・・真面目な大人だからね。
君が分別のあるステキなレディに成長することを願ってる。

そうじゃないと、亡くなったご両親が浮かばれないからね。」


「遠藤先生のいうこと・・・なんとなくわかる気がする。

だから、私・・・ここで精神的に飛び級なしの大人になれるようにがんばる。
それでいいんでしょ。」


「ああ、楽しみにしてるよ。
君の卒業式をね。」


「ほんとに変な先生・・・。」


「よく言われるんだ。ははは。」




保健室を出て、自分の教室に向かって凛花が歩いていると、2年生の教室のある3階の踊り場で、いきなり凛花は薬品のついた布を口に当てられ、意識が遠のいていった。


「た、たすけ・・・て。」


凛花がいないことはすぐに担任の水戸藻と保健室の遠藤との電話によって明らかになった。


「教室に帰っていないだとぉ!」


そして、それは1年の授業中だった智樹にも伝わっていた。


「凛花・・・無事でいてくれ。」


授業中の智樹は1年生の授業を終わらせて家に帰すまで、動きがとれなかったが、遠藤はすぐに自分のパソコンを取り出すと、数回キーボードをたたいた。


「これは・・・ここって、坂野さん家じゃないか!」

< 33 / 60 >

この作品をシェア

pagetop